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果てのない海に呑まれて
第35章 始動
使用人が不思議そうに首を傾げた時、廊下を曲がった先から一人の男が姿を現した
「……あ」
それを見て思い出したような声が漏れ聞こえる
「成る程な…」
説明される前に何となく察したミゲルが小さく呟いた
いや、彼が訪れること自体は何も特別なものではないだろう
だから他の人間は気付かないかもしれないが、ミゲルはその男の持つ獰猛さにすぐに勘付いた
先日会った時よりも明らかに増しているそれに–––
「ファルツ家の方ですね?」
「ああ」
リーは発する雰囲気とは真逆の丁寧な口調で話し掛けてきた
「これからご当主に謁見ですか」
「……」
その言い回しが、ミゲルには皮肉にしか聞こえない
リリアを置いて帰った夜に初めて彼を見た
驚くほど真っ直ぐに自分をぶつけてくる奴だと思った
彼女に似て–––