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果てのない海に呑まれて
第35章 始動
「……何か?」
観察するようにじっと見つめられミゲルの目が細まる
「ああ…いえ。お引止めして申し訳ありません。
では、また」
リーは軽く頭を下げその場を離れた
「……」
「ミゲル様、主人が待っておりますので……」
「ん、ああ」
呼び掛けられてミゲルもまた歩を進める
‘では、また’–––?
カレルの元へと向かうその間も、彼はその言葉の意味を頭の中で巡らせていた–––
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カレルはいつも以上に冷たい眸で、窓の外を見下ろしていた
視線の先には邸を出て行くリーの姿がある
–––傷の痛みは、降り続く雨のせいだけではないだろう
「オレを欺けると思うなよ、野蛮人ども」
本性を露わし唸るように低く呟く
「カレル様、お連れしました」
短いノックの音とくぐもった声が聞こえ、カレルは窓から目を離すと机の前にゆっくりと腰掛けた