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果てのない海に呑まれて
第35章 始動



「……何か?」



観察するようにじっと見つめられミゲルの目が細まる



「ああ…いえ。お引止めして申し訳ありません。

では、また」



リーは軽く頭を下げその場を離れた



「……」

「ミゲル様、主人が待っておりますので……」

「ん、ああ」



呼び掛けられてミゲルもまた歩を進める







‘では、また’–––?



カレルの元へと向かうその間も、彼はその言葉の意味を頭の中で巡らせていた–––










******************************










カレルはいつも以上に冷たい眸で、窓の外を見下ろしていた

視線の先には邸を出て行くリーの姿がある

–––傷の痛みは、降り続く雨のせいだけではないだろう



「オレを欺けると思うなよ、野蛮人ども」



本性を露わし唸るように低く呟く





「カレル様、お連れしました」



短いノックの音とくぐもった声が聞こえ、カレルは窓から目を離すと机の前にゆっくりと腰掛けた


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