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果てのない海に呑まれて
第35章 始動



「入れ」



それを合図に、ミゲルが部屋の中に歩み入る



「レオンはどうしたの?」



その言い方はまるで全てを知っているかのようだ

リリアを喪ったが為に消沈した彼を、嘲笑うように–––



「特にどうしたというわけでは……単に仕事が立て込んだいるだけですよ」

「サラディ家が認知していない仕事か…問題だね」

「いえ、そんな大したものでは……」

「なら…ああ、後継者問題とか? ウェッツェル家の血筋にはロクなのがいないから……」



自分を育ててくれた家さえ否定するような言い方に、ミゲルは思わず顔を顰めた



「まぁいいや。本当はレオンから聞くつもりだったんだけど、君が来てくれたなら話は早い」

「……?」

「あの夜どうして、あの女を逃がそうとしたの?」



笑って“あの女”と言う辺り、リリアを駒としてしか考えていないことが読み取れる



「主人に無断で行動を起こした上ファルツ家を危機に陥らせた……そんな君を、レオンは何故まだ側に置いてる?」


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