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果てのない海に呑まれて
第35章 始動



それが普通だ

彼女は貴族のお嬢様だったのだから。



「……駄目だ」

「どうして」

「逃げるだろう」

「逃げないわ」

「ならリーかレオンか……仲間と連絡を取るつもりか?」

「そんなことしないし出来ないわよ。なんならどれだけ見張りを付けても構わないのよ」

「……」



終わりない押し問答だ



“……なるほどね”



リリアは黙ってしまったカレルに何を思ったのか、急に素直になった



「分かったわ。貴方が外に出さないと言うなら仕方ない……部屋に戻るわね」



少し肩を落としながら大人しく部屋を出ていく





「だから言いましたでしょう? あの方を説得することなんて出来ないと……」

「別に出来ると思っていたわけではないのよ」



廊下を歩きながら、リリアはブリジッタにそう答えた



「ただ確かめたかっただけ……」



自分の故郷を、あの男がどう治めようとしているのか


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