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果てのない海に呑まれて
第35章 始動
”レオンなら……”
思い出しかけて、リリアは首を横に振った
考えるのはよそう
前に進めなくなるから–––
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–––このまま何も考えず眠っていられたら良かったのに。
目を覚ましたレオンは、先ほどよりもはっきりしてしまった頭でそう思った
グゥゥ…
こんな時でも身体は生きようとしている
「…フッ」
己の図太さに笑えてきた
”ミゲルはまだ戻っていないのか……”
薄暗い夕時の部屋で硬くなったパンを手に取り、一口齧る
これからどうするべきか–––
考えたところで仕方がない
リリアを手放した時点で答えは出ているのだから。
「……」
込み上げてくるものを喉の奥にグッと呑み込みながら、レオンはまた水平線に沈む夕陽を見つめた
その瞳から、だんだんに光が喪われてゆく
帰ろう
アウスグライヒへ。
それぞれの場処へ–––。