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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「……リリアを、救いたい」
「……」
ミゲルは立ち止まったが、振り返らないままじっと次の言葉を待つ
「最後に会った夜、彼女は一年前よりずっと強くなっていた。逞しく、けれど真っ直ぐなままで……。
あの子はあんな汚れた場所にいるべきじゃない」
「…ならお前達だけで勝手にやれば良い。あの時お前が言った通り、俺達はあいつを“攫った”人間だ。サラディ家によるギスタールへの襲撃も黙認した。
何故そんな提案を持ち掛けてくるのか、理解できないな」
ばっさりと切り捨てる
だがそれは、普段の彼にしては饒舌過ぎた
「俺はファルツに提案しているんじゃない。君に提案しているんだ」
「何……?」
意外過ぎる言葉に思わずリーの方へと向き直る
「あの夜君が危険を顧みずリリアを救い出したのは紛れもない事実だ。
俺は自分の見たものまで疑うような人間ではないからな」