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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「……いいだろう。期限は?」
「次に君かレオンがサラディ家に出向くまで。どうせそう遠い話ではないだろう。
もし我々に何の報告もなくサラディ家に入れば、その時点で交渉決裂とみなす」
「みなして…どうする」
「戦闘だ。ファルツとサラディ相手に」
“勝てると思っているのか……”
いや、そんなはずはない
この男は本能的だが、そこまで愚かではない
だとすれば–––
「そこまでしてリリアが欲しいか。もし協力してリリアを奪い返しても、例えば俺が掠め取るとは思わないのか」
実際そうなったら–––と想像して、ミゲルはその余りにもあり得ない未来に自嘲した
「誰を選ぶかは彼女が決めることだ……もし彼女に会った時彼女がカレルを選ぶなら、俺は大人しく身を引こう」
「ケチュア人を率いる長にしては、随分と自己中心的な理由だな」
これではいつまた裏切り者が出てもおかしくないだろう
そう思ったが、何処かそうはならない確信めいたものがあった