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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い



胸の奥が騒つく

それは不快感ではなく、身体が熱くなるような高揚感

何かもっと野生的な–––



“ああ、そうか”



この男の野生的な眸が、そうさせるのだ

レオンのような人の心を掴む支配ではない



動物の本能を揺さぶる支配だ



この眸に惹かれるのは、自分の動物的衝動か

いや、雄の闘争本能かもしれない

あるいは–––



“ケチュア人の血、か……”



孤児として育ち母の顔をほとんど覚えていない

ミゲルの中に初めて同族意識とも呼ぶべき感情が湧いた瞬間だった







「…リリアに関しては、だ」

「……?」



珍しく意識の逸れていたミゲルは一瞬話の流れについていけない



「リリアに関しては身を引く。だがサラディ家に服従するつもりはない。

ギスタールが滅んだ後、サラディ家は我々を弾圧しその誇りを傷付けた。彼女が戻る前から、サラディ家はケチュア人の敵だった。

機が重なり今動き出す。それだけだ」


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