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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
大した観察力だ
ミゲルの僅かな言動でファルツに対する私の立場まで見抜いたか
「どちらにも付かず傍観する、という手もあるぞ」
「だがリーはその可能性を提示しなかった……部外者ではいさせないということだ。
此方の様子を見てやはり襲撃してくるだろうな」
レオンは肘をつきながら呟く
「どうするべきか……」
しかしその目は何処か別のものを見ているようだった
現実味がない–––
リリアを取り戻すと言われても、自分にはそんな権利などない
たとえもう一度彼女を傷付けることになっても、リーに託した方がいい
そして自分は敵としてサラディ家と手を組む
そうなっていたはずだ
何も起こらなければ。
あの朝
祝福するような美しい光と、その中に立ち上った黒い一筋の雲
あれは殺してきたはずの自分だったのかもしれないと、今になって思う
「……何故だ」
なぜ私の船だった
一つ違えば、こんなことにはならなかったのに–––。