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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
‘この女が入り込んでいて……’
体を震わせるボロボロの少女
幼さの残るその顔に、女など感じなかった
女だからではなく–––ギスタールだったから。
本当にそれだけだったのだ
手篭めにし、サラディを牽制しようとした
気が変わったのは、ギスタール家が滅んだと聞かされた時の彼女を見たからだ
‘ギスタール家は滅んだ……もうお前はただの娘だ’
‘滅ん……だ?’
絶望に突き落とされたリリア
もっとだ
もっと殺せ
殺してしまえ、己の心を。
私がファルツにしたように、お前も私に全てを捧げるんだ
何も知らずに育った貴族の娘
無垢で純粋な幸せなど、全て幻だと思い知ればいい–––