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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
–––はじめから赦されないことだったのだ
それこそ、一年の間に見た儚い幻。
“レオン・ファルツ”に、戻らなければ。
「どうするべきか……」
答えは出ている筈なのに、レオンはもう一度そう呟く
「……レオン」
虚ろな主人に、ミゲルははっきりと呼び掛けた
「この際サラディ家との関係やリーの思惑はどうでもいい。リリア自身の気持ちも、考えるな。
お前はファルツに逆らっても、リリアと共に生きる覚悟があるか」
「…っ……だがお前は言ったはずだ。私にはお前達に対する責任が……」
「余計なことは考えるなと言ったはずだ!」
「……っ!」
ミゲルの怒鳴り声など、いつ以来か。
その剣幕はレオンさえ黙らせるほどのものだった
「……少し一人にして…考えさせてくれ……」
「…分かった」
レオンの頼みにミゲルは小さく頷くと、更に口を開き–––
「……」
結局何も言わないままそっと扉を閉めた