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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「……っ」
レオンはグッと唇を噛んだ
腹立たしい–––
ミゲルはあんなにも真っ直ぐだというのに。
常に迷いなく、ファルツに尽くす忠臣。
それゆえ誰よりも信頼の置ける側近であり、それが嫉ましくもあった
護るべきものに、自分の生き甲斐に全てを掛けられるあいつが。
昔から–––
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「視察?」
「そうだ、一週間ほど留守にする。フェリペも連れて行くから、その間家のことは任せたぞ」
「はい!」
信頼するような父の言葉にレオンは顔を綻ばせ元気に返事をする
後ろに控えていたカタリナが不満そうにその様子を見つめていた
「……でも」
レオンはちらりと後ろを見やる
目が合ったのはカタリナではなく、兄の側付きであるミゲルだった