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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「お前、兄上に対してもそうなのか」
「そう、と言いますと……?」
「いつもそうやって仏頂面で人の気持ちも無視して傍に居続けるのかってことだ」
「……そうですね…」
挑発してみるも、ミゲルは顔色一つ変えぬままただ考え込んでしまった
「フェリペ様が席を外すよう仰ったらそうしますが、大抵近くには控えて居ます。完全にお側を離れるのは代わりの者がいる時だけです」
「…あ、そう。退屈な仕事だな」
「いいえ、大切な主人をお護りするやり甲斐のある仕事ですよ?」
「……」
レオンは興味を失ったようにまた前を向いて歩き始める
だがそんな彼の背中に更にミゲルの言葉が続いた
「それに、フェリペ様はいつも私に色々なことを話して下さいます。時には私の話を聞いて下さったりも……なので、全然退屈なんてしませんよ」
それは二人の間に流れる沈黙がレオンのせいであることを暗に示しているようで、空気がより重くなる