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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「ね、いいでしょう?」
「ですがレオン様が……」
腕を引かれ部屋に入って来たミゲルは珍しく困った顔をしている
窺うようにチラリと上げた視線がレオンの目と合った
「ハァ……別にいい。私とフローラの相手をしろ」
「…はい……」
ミゲルは許可を得ておずおずと椅子に腰掛けるも、すぐに居心地悪そうに体を動かした
「なんだ。落ち着きないな」
「あの、言いづらいのですが、レオン様……」
「…?」
「私はトランプゲームのやり方を知りません」
レオンは驚いて言葉が出なかった
「まぁ! 小さい頃お母様に教わらなかったの?」
フローラの無邪気な発言にハッとし、考え込むように口元を押さえる
そして小さく呟いた
「そうか…確かお前は孤児院育ちだったな……」
ミゲルが頷く
なぜか兄の周りにはそういった特殊な育ちの人間が少なくないので、さほど気にしたこともなかったが–––。