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果てのない海に呑まれて
第36章 迷い
「だが兄上の相手をするくらいあっただろう? 毎日ただ話していたわけじゃないはずだ」
「フェリペ様はチェスの方を好まれるので……」
「…へぇ」
“こいつ、また追い出してやろうか”
自分の知らない兄の一面をミゲルが知っていることが何だか無性に腹立たしかった
「じゃあ私たちがミゲルにトランプ教えてあげる!」
「え…」
「その代わり、ミゲルはチェスを教えてちょうだい!」
それ以外に何も思いつかない二人は、大人しくフローラの提案に乗るしかなかった
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「ミゲル、チェスの相手をしろ」
夕食後、レオンがそう声を掛けたのがそれから二日後。
兄達が家を空けてから五日目のことだった
「レオン様もすっかりチェスの虜ですね」
日に何局も要求してくる今の主人に、ミゲルは思わずクスリと笑みを零した