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果てのない海に呑まれて
第37章 代償



カタッ……



その時強く弾いたポーンが倒れ、レオンはハッと我に返った



「ミゲル……」



静かに扉の前に立つ従者に小さく声を掛ける



「座れ。相手が居なくて退屈していたんだ」

「レオン様」



ピタリと動きが止まった

何かあまり良くないことを聞かされる気がする



「私は明日この邸から出て行きます」

「……何故」

「…フェリペ様の為に」



カタリナの名は出さない方がいいだろうと、言葉を濁して答える



「そう、か……」



レオンはミゲルの方を振り返らなかった

認めたくはないが、寂しさが–––



「このゲームですが」



そんな彼の想いなど知らないかのように、ミゲルは彼の隣に立ちチェス盤を覗き込んだ



「ここからでも逆転出来ますよ」

「何……?」



黙って駒を動かしはじめる

最後にクイーンを犠牲にして、黒のキングを倒してしまった


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