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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
「母上、ミゲルはどこですか」
側付きの姿が見えないことに胸騒ぎを覚えた
「……」
「レオンの所ですか?」
「…あの者は今日、この邸を出て行きました」
「……!」
カタリナは目も合わせずにそう告げた
「それはまた随分急だな。何か不手際でもあったのか?」
「フェリペ様!」
居てもたってもいられず走り出したフェリペにルチアーノから声が掛けられるが、彼が立ち止まることはなかった
「……ハァ」
まだまだ子供だなとその様子を尻目に溜め息を吐きながら、ベルナルドは質問の答えを促す
「あの者の実家から接触があったのです。息子を返すようにと」
「実家? 確かあの者は孤児だったはずだが……確かなのか?」
驚いたことに、カタリナはその質問に肩を竦めてみせた
「さぁ…ですがそれが事実かどうかはあまり問題ではありません。
重要なのは、あれを差し出すことで得られる見返りですわ」