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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
この頃のベルナルドはまだ当主としての威厳を失ってはいなかったのだ
「ルチアーノ」
「はい、父を呼んで参ります」
カタリナの方を一瞥し、戸惑う彼女に溜め息をつく
「一度手放した異人の子供を取り戻す為に権力を売る貴族などいるものか。まして我々は“皇帝派”だ。この派閥間問題の重要性をお前は何も分かっていない。
大方向こうの狙いは我々に教皇派との繋がりを持たせ自らは手を汚すことなく皇帝に我々を処断させる……といったところだろう」
「そ、んな……」
そこでようやく、カタリナは自分が利用されたことを理解した
自分の失態に俯き、唇を噛む
「言い寄ってきたのが実際あの者の実家であるかさえ疑わしい」
「……」
「以後気をつけなさい。特にジェーニオの教育に誤りがないように」
「……はい」
そして小さく会釈すると、小走りに夫の側から離れて行った