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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
レオンはふいとそっぽを向いた
「知りません」
「喧嘩でもしたの?」
「知りません」
それしか言わない弟に溜め息を吐きつつ、フェリペはそっと彼の前に座る
「……あんな奴…」
「……」
「勝手に出て行ったんだ。全部どうでも良いみたいに」
それは自分が馬鹿だったと言っているようだった
「ミゲルは……」
その言葉にレオンは嫌々と耳を塞ぐ
「聞くんだ!」
「……っ!」
「ミゲルは真っ直ぐな子だ。不器用なくらいに。
何かをどうでも良いと思ったり出来る奴じゃないんだよ」
「……」
レオンの瞳に涙が溜まる
–––そんなこと、分かっているのに。
今して欲しいのは、アイツの擁護なんかじゃないのに。
「……ミゲルと、チェスをしたね」
「……」
「部屋に駒が散らばってた」
黙って頷く
「楽しかったんだろう?」
「……」