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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
しばらく黙ってから、レオンはボソッと言った
「…兄上と、したかったから」
「……フ」
フェリペは小さく笑い、弟の頭を撫でる
「ああ、分かってたよ……でもそれだけじゃないだろう?」
「……っ」
耐え切れなくなって、レオンは泣き出してしまった
「だって…何もなかったみたいに……っ! 何も思ってないって……そんな顔してっ」
「ミゲルはいつだってそうだ」
フェリペは弟を抱き締めあやしながら語る
「何回チェスをしても、父上より表情が読めない。負けても顔色一つ変えない。
でも……」
そこまで言うと、クスリと笑った
「私が階段から落ちかけた時の慌てようといったら、こっちが申し訳なくなるくらいだったよ」
「……」
レオンは少し落ち着いたが、今度は兄の腕の中でモゾモゾと動き始めた
「どうした?」
「……別に」
フェリペは僅かに眉をひそめた