この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第37章 代償
‘同じファルツ家の一員として’
フェリペは小さく眉を顰めた
“そんな言葉、お前の口から聞きたくはないよ”
彼を見るたび自分が嫌になる
人を惹きつけてやまない弟。
その純粋さを愛しながら、何処までも腹黒い自分。
それはもはや自分にさえ分からないほど深く、今だって彼のミゲルへの想いを利用したことになる
“ミゲルは失えない……数少ない味方だ”
フェリペが本当に守りたいのはただ一人–––レオン、ただ一人。
そんな弟さえ自分の為に使ってしまうのだから、なんと愚かなことか。
これがファルツの次期当主としての義務なら、そんなもののためにお前が生きる必要はない
どうかいつまでも、我儘なレオンでいて欲しい–––
「……」
沈む直前、最後に真っ赤な光を放つ夕陽にフェリペはギュッと目を閉じると、急いで父の元へと向かった