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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
「……お前、馬鹿なのか?」
「売られたケチュア人は最悪生きながらバラされる。奴隷でも大貴族の家にいる方が幸せだぜ?」
何も分かっていない子供を哀れにでも思ったのか、男二人は自分たちの利益の話を一旦やめミゲルに真実を伝えてやる
バカにしているだけ、なのかもしれないが。
「自分を棄てた親の元に戻るほど立派じゃない。こんな人間にも誇りはある。
それに……」
ヒュウと風が吹き、馬車に取り付けられた灯りが揺らめいた
「ファルツにとって価値がないなら、もう死んでも構わない」
レオンはギュッと拳を強く握る
“勝手なことを……”
自分だけそこから逃れるなんて、赦さない
「……」
そのままラオフェンに跨り、レオンはふと動きを止めた
これでは顔を覚えられてしまう
持っていた布を顔に巻き付けるが、それでもまだ不安だった
‘ファルツの為に’
兄や自分が、そしてミゲルが動くその理由を危うくするわけにはいかない