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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
ヒュウッ
再び、そして先ほどよりも強く風が吹いた
レオンはこの頃からどこまでも運命に愛された子供だった
消えた灯り、月もない闇
「ティエン・トドゥエスム!」
レオンは咄嗟に叫んでいた
それは彼にとって何の意味もない言葉で、ただ以前ミゲルが兄の前に跪きそう囁いたのを見ていただけだった
ただこの一瞬を逃さぬ為。
「なんだ……!?」
案の定、暗闇に響いた声と何処からか駆けてくる蹄の音に男たちは慄いた
レオンは殆ど見えない道をラオフェンに任せ走り抜ける
「……っ!」
そして馬上から手を伸ばした
“ミゲルなら、必ず掴む……!”
そう信じて–––
パシッ!!
レオンはグッと力を入れ、腕を引き上げた
生来か職業柄か、ミゲルは夜目が利く
何かを察したのか僅かに足の遅くなったラオフェンに飛び乗ると、前にいた人物に小さく息を呑んだ