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果てのない海に呑まれて
第37章 代償
整った顔立ちに見た目の歳にそぐわぬ大人びた態度。
アウスグライヒに住まぬ者でさえ、その名を一度は聞いたことがあるだろう
「ファルツ家の…フェリペ、様……?」
「その通りだ。お前たちか、私の従者を連れ去ったというのは」
「連れ去っただなんて人聞きの悪りぃ!」
笑えば誰より慈悲深く見えるのに、そんな彼だからこそ冷ややかな目付きは人を非常に怯えさせる
「ちゃんと奥様の許可は貰って……」
「その女は“奥様”などではない。ファルツという虎の威を借る醜い狐だ」
それは、普段レオンを諭しているフェリペとは到底思えぬ言葉だった
「そ、そんな……」
「ならオレたちゃ騙されただけだ!
それに、連れ去られたのはオレたちの方だ!」
「何……?」
ミゲルの居場所を聞き出そうとしていたフェリペは、逆に顔を顰める
「ここで、その……休んでたら! 突然暗くなって声が聞こえたんだ!
次の瞬間にはもう奴は居なかった!」
「声?」