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果てのない海に呑まれて
第38章 為すべきことを成せ
そんなことも思い出せないほどに、彼との日々は刺激に満ちていた
故郷に戻るのではないと、そう思ってシエラに立った
目の前の街は、生まれ育った場所なのにどこか見覚えがなく。
開け放した窓から吹き込む風が髪を揺らす度、リリアはため息をついていた
「リリア様」
「ブリジッタ様!」
この屋敷での唯一の話し相手。
カレルの妻でありながら、気の許せるかけがえのない友人。
ほんの数日で彼女たちの絆は強く深まっていた
それでも互いに相手がカレルの正妻であることを主張し合い、敬語を使うような不思議な関係だ
「また……お髪を降ろされているのですね」
「……」
少し前に言われた
カレルがこの髪型を不快に思っていると。
「受け入れられないのは分かっています……」
大人になってまで髪を下ろしているのは卑しい–––娼婦たちと同じ。
リリアも結い上げることにずっと拘っていた