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果てのない海に呑まれて
第38章 為すべきことを成せ
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「リー、いるんだろう」
サラディ家へと向かう途中、誰もいない路地にミゲルは声を掛けた
「さすがだな」
角の暗がりから一人の男が姿を現わす
「あれだけの殺気を出されればな」
「このままサラディ家に入るつもりなら君を殺さなきゃならない」
この前の交渉通りに–––。
「……一つ聞いてもいいか」
「あの船員を殺したのは、俺たちだ」
ヒュッ
短剣が風を切り、リーの頭部を目掛けて一直線に振り上げられる
だがリーは読んでいたのか僅かに首を傾ぐと、硬いはずの石壁に剣先がめり込んだ
「……本気で殺す気だったのか?」
「そのつもりならとうにやっているが……」
確かに、普段のミゲルなら読まれることも見越して次の攻撃を繰り出すだろう
だがその手は短剣を引き抜くとそれを鞘に収めて大人しくなる
「これで避けられないような使えない相手なら生かしておいても意味はない」