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果てのない海に呑まれて
第38章 為すべきことを成せ
船員たちを家族だと言っておきながら、皆の仇を前にミゲルは動かない
「大切な者を裏切るのは慣れている……何を利用してでもな」
「その考えは好きじゃない。だが今は自分の策が上手くいったことを素直に喜ぼう」
リーは笑いもせずにそう言うと、それに、と後を続けた
「時間がない」
「何?」
「俺たちが動いたことは当然カレルの耳にも届いている。
リリアを……脅しに使われているんだ」
「……!」
ミゲルは今度こそ本気でリーに掴みかかりそうだった
そんな大切なことを何故早く言わなかったのかと。
「大人しく従わなかったと知れば、彼女も無事ではいられない。だからこれは賭けだった。
君がすぐに行動を起こすことも含めてな」
「……っ」
頭が切れる上に、なんて野生的な男だろうか
だが感心している場合ではない
「ならすぐに向かおう。他の仲間はどうした」
「山の上で俺の帰りを待っている」
「俺が動かなかったらたった一人で乗り込むつもりだったのか!?」