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果てのない海に呑まれて
第39章 孤独な口付け
子供の頃に家族と引き離され、政略に利用され———
挙げ句に肉体関係まで求められたのだ
彼が生来歪んでいたとしても、今の彼を作っているのは紛れもなくそういった経験だろう
利用し利用される
それ以外に人との関係を知らない
簡単に裏切られ、捨てられる
そんな世界しか知らない
「可哀想……」
気が付けば、そんな言葉を口にしていた
「何……?」
そんな彼女の言葉を、カレルが聞き逃すはずもなく。
「今……オレを哀れんだのか?」
「あ…」
背中から感じる冷たい空気に体が強張る
「答えろ」
「え、え……」
声が震えた
「でも、別に見下したわけじゃないわ」
レオンに初めて会った時もそうだった–––
怯えるほど気丈になる
それがリリアだ
「同じことだ!」
そしてそれに苛立ちを覚えるのがカレルという男だった