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果てのない海に呑まれて
第39章 孤独な口付け
「良いこと教えてやろうか」
上機嫌だが、カレルは貴族らしく取り繕うのをやめたらしい
荒々しい言葉遣いのまま、リリアに顔を近づけ先を続けた
「レオンは“赤の魔物”。その飼い主は“ヴィークの皇帝”であるファルツ家だ」
「知ってるわ」
「まぁ聞けよ。箱入り娘だったお前は知らないだろうが、本物の海賊ってのは旗もあげずに相手に近付いて全てを掻っ攫って行く。
だがレオンの紳士っぷりはどうだ」
反吐が出る、と言わんばかりの口調だ
「それは……ファルツ家が貴族と並ぶほどの商家だからでしょう」
「そうだ。だが違う」
回りくどい言い方にリリアもいい加減苛立ちを隠せない
「薔薇を打って成り上がったファルツ家。特にその薔薇を気に入ったのが……皇帝だよ」
皇帝はヴィーク周辺を治めるこの帝国の頂点。
だがそれぞれの街や、中に含まれた国々は殆ど独立しているといって良かった