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果てのない海に呑まれて
第39章 孤独な口付け
それを直接統治していたのが、ギスタール家といった旧家の貴族だ
「今の皇帝は若くして帝位に就き野心が強い。オレはそこに漬け込んだわけだが……」
それは自分の想像以上だった、とカレルは語る
「皇帝はヴィーク総てを直接統治しようと考えている。それには貴族が敵だ……そしてもう一つ、貴族を敵とする勢力がいた。
市民だ」
敵の敵は味方。
つまり–––
「その代表が、ファルツ家だったのね」
「その通りだ」
物分かりの良い娘にカレルは微笑みかける
そしてようやく少しリリアから離れると、近くの机に置かれた筆起きを弾いた
「皇帝は多くの恩赦と引き換えにファルツに様々な仕事をさせた。
汚れ仕事もその一つ……レオンが掲げる赤旗はファルツ家のものじゃない。皇帝への忠誠だ」
一商家の下克上ではなく、遥か高みの者が自分たちを–––
「そしてギスタール家が襲撃された時、奴らは見て見ぬ振りをした!」