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果てのない海に呑まれて
第39章 孤独な口付け



もちろん、覚悟はしていた

むしろ良くここまで手を出されなかったものだ



それでも–––





「私に……何が出来る?」



いや、リリアは落ち着いていた

震えてはいたが、カレルが予想していたよりもずっと。

結い上げた髪が彼女を一層大人びて見せている



「私…私に出来ることなら、初めから何でもするつもりだったわ」

「……」



カレルは押し黙った

その眸に驚きはなく、ただ冷たい視線がリリアを射抜く

どうせ嘘だろう、と。



「でも私に出来ることなんてきっと少ないでしょうね……」



リリアはその眸を見て察したのか、そう続けた

その瞬間、カレルの表情が歪む



「……フ」



その笑みは嘲笑とも、喜びとも取れる



「それでいい……不確かな言葉を並べられるよりもマシだ」



“そうでしょうね”



リリアは思った



この男にとって、確かなものは自分自身だけだろうと。


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