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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
「そんなことはしなくていい。客人を招くのが我々ケチュア人の仕来りだ。
……他の奴らにも、よく言っておく」
獲物を下ろすように言うと、リリアに行こうと告げてテント群から少し離れたところへ移動した
「気持ちが良いわね。少し寒いけれど」
高いところから周囲の山々を見渡し、リリアは深く息を吸う
そんな彼女の隣にリーは片膝を立てて座ると、安心したように力を抜いた
「まぁ他のところと違ってここには雪が降らないからまだ過ごしやすいよ」
それでも、とリーは続けた
瞳には寂しそうな翳が差している
「もうすぐ、そうじゃなくなる」
リリアは理由が分からずその顔に不安を覚えた
「どういうこと?」
「もうじきサラディ家のやつらが追ってくる。そうすればここは戦さ場になるだろう」
「そ、んな……」
来たことはなくても、部屋の窓から見えるこの景色が好きだった
幼い頃リーに聞かされた色々な話から、どんなにか想像を膨らませただろう