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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
ゆったりと流れる時間
気高き民
野生と共に生き、草原を翔ける–––
リリアには全く縁のない世界だった
「どうしてそんなこと……」
それが今、失われようとしている
「もしそれが私のせいなら……」
リリアの頭の中は、いっぱいいっぱいだ
「違う、君のせいじゃない」
リーはそう言われると見越したように落ち着いた声で彼女を遮った
「俺たちは一年前から覚悟していた。ギスタールが滅びサラディが声を掛けてきた時は、何度も皆で話し合った。
本当は俺自身迷っていたのかもしれない……どこかに和解の道はないかと」
無用な争いならしたくない
獅子も穏やかであれるならその方がいい
「だがカレルはケチュア人の誇りを何度となくへし折った」
怒りに前を向くリーの髪は、風が吹いても靡かない
リリアはそっと彼の前に膝をつくと耳元から搔き上げるように撫でた
「覚えているわ……ケチュア人にとってこれがどれだけ重要な意味を持つか」