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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
長い髪はケチュア人の強さの証
戦いは–––鍛錬は殺す為ではなく、己を鍛えるためにある
敵に負けるは己に負けたこと
それは時に雄々しく狩をする彼らだからこその伝統
負ければ切らねばならない
「……それだけのことだよ」
あの時一瞬でも隙を見せた自分が悪い
「それに、昔はずっと短いままだっただろう」
「フフ、懐かしい……いつもお父様に負けたってむくれてたわね」
「ああ……その頃に戻ったと思えば何ということもない」
まぁ
隙を作ってしまったのは君のせい
なんだけどね–––
「結局、俺たちはずっと戦うきっかけを待っていたんだ」
低い声色に戻り、リーの目がまた険しくなる
「君をその理由にしてしまった……本当に申し訳ない」
「そんな…こと……」
泣きそうになるリリアを引き寄せ、抱き締める
「……っ」
抵抗することなく抱き締め返され、閉じられたリーの瞳に更に力が込められる