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果てのない海に呑まれて
第41章 信じるもの
「そう言われてそれに抵抗して、結果また溝を深めているのが分からないのか?」
「それを先に作り出したのは向こうだ! オレたちは戦うしかなかった!
自分たちの誇りを示す為にな!」
そう叫んだ男の拳は強く握られていて、今にもミゲルに掴みかかりそうだ
「……誇り」
何が、誇りか
「お前達は誇りを示したいんじゃない。傷付けたくないんだ」
ケチュア人たちは顔を見合わせた
意味が分からないと言いたげだ
「俺の主人〈アルジ〉は」
そう言う時、ミゲルは顔を上げ強く周りを見回した
「俺たちのように異端じゃない。
対して俺はどうしようもなく異端だった。俺の中に半分だけ流れるケチュア人の血が、どちらになることも赦さなかった」
そう、思っていた
この身に流れるケチュアの血が嫌いで
父を、そして母をも恨んだ
「だが、そうじゃない……」