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果てのない海に呑まれて
第42章 真白き馬
リーが話す間に、一人の白髪の男性が輪の中に歩み行った
その顔は厳つく、しかし目はどこか哀しげだ
「神の怒りに触れないよう祈り、神の恩寵に感謝しながら草原を行く。
でもある時、それを人間に阻まれた。
ほら、長老が話すよ」
長老は地面に敷かれた絨毯にゆっくりと腰を下ろすと、震える唇からはっきりと語り出した
「我らがまだ平和にあった頃……」
いつのまにか雄叫びは消え、パチパチという焚き火の音と本物の風の声だけが周囲を包む
「ある定住民族が自分たちの領土を広げようと侵攻を開始した。我々ケチュア人は出来るだけ争いを避け徐々に後退していったが、もはや退がれぬという場所まで来た……これ以上は神の怒りに触れる。我々は闘った。
だが所詮は穏やかに生きてきた小さな遊牧民族だ。すぐに侵略者たちに追い込まれた。
あと一歩で全滅という時…皆もよく知っているであろう……“クオック・スー”が舞い降りたのだ」