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果てのない海に呑まれて
第42章 真白き馬
「自分たちが何かを生み出していると驕るような人間には天罰が下る。
良いか、お前達……」
そこから先が続くかに思ったが、長老は口を噤んだ
「奴らに思い知らせてやれ!」
「サラディと、神を忘れた元同胞に我等が天罰を下すのだ!」
数人の男たちが哮り、周りもそれに呼応する
長老は疲れたようにため息をついてゆっくりと立ち上がった
「……」
此方に歩いてきた長老にリーは黙って頭を下げる
「……避けられぬのか」
「はい……」
その二言だけを間に残し、長老は暗闇に消えて行った
「人は何も生み出さない。自然を尊ぶ自分の民族の考えには誇りを持っているよ。
けど……」
リーは長老と同じ目で、儀式を再開した仲間達を見つめる
「けど……?」
黙ってしまった彼を、リリアが促す
「ケチュアの人々が驕っていないなんて、それは嘘だ。
あの歴史で俺たちは確かに自然に救われただろう。
でもそれは俺たちの中にもう一つのある意識を生み出した……」