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果てのない海に呑まれて
第43章 温もり
最初のうちはミゲルが火を持って先導していたが、標高が高くなり雪が地表を覆い始めてからは月明かりとその照り返しで十分だった
火を消し、野生動物に注意しながらも出来るだけ素早く進む
「……寒くないか?」
「少しだけ……」
悴〈カジカ〉むリリアの指先をレオンは布の中でギュッと握る
「ねぇ、アウスグライヒに戻ったらお願いがあるの……」
「なんだ」
「私、もっと街の人々を知りたい。市場や船乗りだけじゃなくて……ニノみたいな、普段見えない部分も全て」
「……突然どうした」
リリアは寒さを堪えつつ、冷たい空気を吸って想いを伝えた
レオンが迎えにくる前に、考えていたことを–––
「ミゲルと一緒にシエラの街を歩いた時、暗い路地の中に佇む人たちを見たの。
生きる意志も少なく、ただ佇んでる……そのまま亡くなっている人もいた」
寒さとは違う震えが、リリアの手から伝わってくる