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果てのない海に呑まれて
第43章 温もり
“…可愛げのない……“
そんなことを思いつつ、再び前を向き険しい道を行くのだった–––
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二日目の夜遅く–––いや、本当は三日目の明け方近かったのだが、空が白み始める前に吹雪に追い付かれ彼らにはそれが分からなかった
「ハァ……ッ」
吐き出す息さえ冷たくて、もう白くはならない
食糧のほとんどは凍ってしまい、最初は温かかった羊の乳もとっくに冷え切っていた
“シエラに長く留まったからか…思った程ではないな……”
そう頭では思っていても、体は誤魔化せない
「……」
リリアは芯だけが辛うじてまだ温かいレオンの胸に寄りかかった
普段あまり雪の降らないアウスグライヒよりも、冬は本格的なシエラで育ったリリアの方が実は寒さに強かった
「……ッ」
とはいえ寒いものは寒い