この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第44章 守られた魂
ガタンッ!!
部屋に入るなり、よろけて真横の鏡台にぶつかる
「……ハァッ」
息苦しさに何処ともなく睨みつけると、目に入るのは自分の顔。
脂汗が額だけでなく首筋にまで滲んでいる
ケチュア人特有の褐色肌の為に分かりにくいが、顔色はリリアの言う通り良くはない
それでいて身体は燃えるように熱いような、吹雪に帰ったように寒いような–––
「おか、しい……」
風邪でもひいたか?
今更?
「……ア…ッ」
鏡の中の自分–––
目の下に現れた隈をなぞるように指を這わせたところで、ミゲルは苦しげな声を上げた
痛みに身体が固くなる
「…ハァ……ハァ…ッ」
鋭い痛みが体内を駆け巡ると、それは消えても鈍痛は残る
ミゲルはゆっくりと慎重に身体の力を抜いていった
“こんな…ところで……”
へばっている場合ではない