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果てのない海に呑まれて
第44章 守られた魂
割れた花瓶、散らばる水と花々–––
「レオン、ミゲルが!」
そこに、側付きはいた
「……っ」
身体の震えは立ち上がろうと懸命に踠いているのか
あるいは苦しみへの反応か
「ミゲル、どうした? 何があった!?」
「…なに、もっ……ない」
明らかに嘘と分かる状態でそんなことを言うのは珍しい
普段と違う彼の姿に此方までつい身震いしてしまう
「ひどい熱があるわ」
そんなことは見れば分かる
浅い呼吸は熱く、少しでも動けば身体が痛むのか息を詰まらせる
「風邪……?」
リリアの呟きにレオンは顔を顰めた
ミゲルが風邪をひいている姿などほとんど見たことがない
仮にひいていたとしても、本人が上手く隠してしまうのだ
まさか、これは–––
レオンの頭に最もあって欲しくない考えが浮かんだ