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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
「おいで。お前を連れて行きたいところがあるの」
母はいつもと変わらぬ優しさで俺の手を引き、海沿いの道を歩き始めた
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「母さん、どこ行くの……?」
「……」
一つの重厚な扉の前に立つと、俺には返事をせずそれを叩く
そこは町中の教会で、人の出入りはほとんどなかった
「……あら、あなた」
「約束のお金をお持ちしました」
小窓越しにそんなやり取りがされるが、背の低い俺に相手の姿は見えなかった
「……今院長を呼んで来ますので」
冷ややかな声だけが俺の背を伝って落ちる
「……ミゲル」
”院長”とやらを待つ間、母はしゃがんで俺の目を真っ直ぐに見た
「これを、あなたに」
握らされたのは小さなカメオ。
まじまじと見ようとするその前に母が俺を強く抱き締めた