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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
「……」
俺はその一挙手一投足をじっと注視する
「……あっ!」
そして始まりの合図を待つより先にサッと踵を返し、相手に背を向け駆け出した
唖然とする子供達の間を掻き分け中庭から走り出す
「……」
俺が廊下の先に消えたところで、ドッと笑いが起こるのが聞こえた
「やーい、弱虫!」
「逃げてんじゃないわよ!」
「お前なんかさっさとやられちまえ!」
その声を聞きながら、俺は唇を強く噛みしめる
”こんな、ところで……”
こんなところで見世物にされるくらいなら。
自分の力で、抜け出してやる
「おい、あれ……」
全速力で向かってくる俺を見て、見物人はピタッと口を噤んだ
”…あともう少し……”
男の背に手を伸ばし、揺れる鍵を掴むまで–––