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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
まだ外は暗いが、こんなことはしょっちゅうだ
「また寝られなかったのか?」
「……」
この屋敷に来てもうひと月になろうとしている
だが与えられたベッドが–––たとえ使用人用のそれであっても、俺には十分過ぎてまともに眠れていなかった
「ハァ……この訓練はお前には必要ないな」
有事に備えいつ何時でも目を覚ます練習も
細かい物音に反応して警戒する練習も
俺にはほとんど必要なかった
弱者ゆえに身についた強さ
大丈夫だ
こんな俺でも
ここでならやっていける–––
問題は護衛としての技術そのものだった
「……っ」
片手を地面につけもう一方は背中に回し
ゆっくりと腕を曲げてゆく
”…九十九……”
伝い落ちる汗が目に入るが、そんなことは気にならない
”百……!”
「ハァッ…!」
腕立ての状態からそのまま地面に突っ伏してしまう