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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
これでは駄目だ
”俺にできることは何だ”
鍛錬場の外れから短剣を持ち出し、的に向かって構える
自分の存在意義は
自分で見つけなくては–––
「……くそっ!」
半年経っても、三分の一は的の外
焦ればそれだけ手元が狂う
悪態をつきながら短剣を回収していると、俺の足元に長い影が伸びた
–––ああ、もうこんな時間か
「そんなに焦ってどうするつもりだ」
「……ルチアーノ」
当主の専属護衛
その息子であるルチアーノ自身は常に誰かに付いているわけではないから、こうして時々稽古をつけに来てくれる
–––俺はまだ誰にも付けていない
「頑張ってて偉いな」
「……当然のことをしてるだけだ」
初対面であっけなく倒されたことを俺はまだ根に持っていた
生意気なガキだとよく笑われていたが。
今日に限っては、そんなこともなく真面目な顔をしている