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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
「お前、自分の良さが何かちゃんと分かってるか?」
「……警戒心が強いところとか?」
訓練で後ろを取られたことはほとんどない
「まぁ……半分正解だな」
ルチアーノは俺が使っていた短剣を勝手にしまいながら回りくどい言い方をした
「お前、逃げただろう」
「は?」
「初めて俺と勝負した時だ」
なん だと?
「逃げただって……?」
俺は拳を握り、目の前の男を睨み据えた
「ふざけんな!」
カッとなって殴りかかった一瞬の後
「……っ!」
俺はあの時と同じ、ルチアーノに腕を掴まれ逆さまにされていた
「…く…そ……!」
文字通り頭に血が上り、顔全体が痺れてくる
「今のお前は馬鹿だ。もし同じことをあの時していたら、俺はお前をここに連れてこなかった」
「……!」
俺にとって一等きつい言葉だった