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果てのない海に呑まれて
第45章 全てお前の為
「…この身体に流れる蛮族の血を……何度抜き去りたいと願ったか」
「何度願おうと、それでもお前がケチュア人であることに変わりはない」
「……っ」
静かに、何の侮蔑もなく告げられ胸が軋んだ
今まで受けたどんな言葉より俺の中に入り込んでくる
「だが蛮族…蛮族か……」
表情を変えた俺に構うこともなく、レオン様は何やら考え始めた
引っかかることがあるらしい
「……」
「……」
「…お前は“そう”なのか?」
「……え」
突然の問いに俺は間抜けな声で返していた
「お前は、お前の母親は本当に野蛮なのか?」
「……」
改めて問われ脳裏に浮かんだのは母の姿
石に掘られた冷たい彼女ではなく、俺自身に向けられた優しい笑顔–––
“違う…俺は……”
自ら“そう”だと思うことで傷付かないようにしていただけだ
「……フ」