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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
仕方ない–––
そう思いつつも、見せつけられている気がしてならない
恐らくレオン自身気付いていなかったであろう–––絆の深さ。
自分が想像しか出来なかった互いの過去を、共に乗り越えてきた強さ。
こんな時に、我ながらなんて醜い感情だろうか
「…リリア……」
小さく唇を噛んだ時、背後のレオンから名前を呼ばれた
「どうしたの?」
近付くと、グッと側に引き寄せられる
「……」
彼は何も言わなかったが–––それはいつものような抱き締めてくれる腕ではなかった
縋るように寄り掛かり、彼女の腕に顔を隠す
まるで子供のようなその姿に、リリアの中に一年前の–––まだ出会って間もない頃の彼が蘇った
初めて彼のことを理解しようと思ったあの日
海を見ながら抱かれたあの日。
あれがきっと彼の本当の姿–––それは救われぬまま救わなければいられない大人に育った小さな子供。