この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
泣かない彼の為に。
それを、この人は–––
「ミゲルが死ぬわけないだろう」
“どうして拭ってしまうのよ……”
目の端に触れる彼の優しい指遣いに安心させられてしまう
レオン
どうしたら、貴方を救えますか–––
「……戻ったようだな」
外の気配を感じたのか、レオンが扉の方へと目を向けた
「レオン様、連れて参りました」
間もないうちにその言葉通り外側からルチアーノの声が聞こえた
「入れ」
レオンが許可すると、彼とともに現れたのは白い髭の特徴的な老人だった
リリアは直接会ったことはなかったが、彼がロンブローゾ医師であることはすぐに分かる
「……」
医師〈クスシ〉特有のツンとした匂いをまとった彼は、怯えたように目を泳がせながらレオンの側に来て頭を下げた