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果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「……追及は後だ。ファルツ家に伝わるこの秘毒…浄められるのはお前だけ。
出来ないとは言わせないぞ」
ロンブローゾ氏はより一層頭を低く下げると、ミゲルに近付きその様子を観察し始めた
「……」
瞼を開け、脈を測る
全身を隈なく見てから最後に傷口を確認すると、改めてレオンの方に向き直った
「治ります」
「……そうか」
淡白に答えつつも、吐かれる息からは安堵が隠せていない
「……驚くべきことですな」
沈黙は恐ろしいのか、解毒の用意をしながらロンブローゾ氏は続ける
「この毒の特徴は僅かな量で確実に相手を死に至らしめる……しかし毒と見極めるのは難しい。
症状が他のものに比べると穏やかですからな。猛毒ながら遅効性ということもある」
「穏やか……あれで」
熱に身体を震わせるミゲルを思い出しながら、レオンは怒りを含んだ声で呟く
「……」
医師は解毒を終えると、窺いつつもレオンの方に向き直った